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掲載日:1998.9.26

車検・なぜ必要なのか  辻本誠

長良川のトライアスロン大会は日本選手権のタイトルがかかっていました。
いくつかある日本選手権大会のシリーズ戦の一つです。格式が日本選手権
となるとルールも厳正に遵守されなければなりません。前日の車検もいくつ
かの点で普通の大会より厳正に行われていました。

特にハンドルバーについては厳しく規制され、ドロップバーであること、そ
してDHバーはブレーキレバー先端から前に出ては行けない、前車輪ハブ軸
を通り地面に垂直な線より15cm以上前に出てはならないとされました。中
には普通のDHバーを短く切って使っている人もいましたが、殆どの選手が
スピナッチ、もしくはその模造品を装着していました。

その他、サドルがボトムブラケットセンターを通り地面に垂直な線より前に
出てはならないなど、本来の車検に近いチェックがされていたようですが、
自転車競技の車検と比較すると、どうひいき目に見ても見劣りするものでし
た。

随分以前の話で恐縮ですが、日本で自転車競技の世界選手権大会が行われた
とき、私は特別パス(どこへでも出入りできるスーパーID)を手に入れ、
競技会場の中で観戦することが出来ました。自転車競技の場合、会場の中
で、競技の直前に車検が行われます。そこで不合格になるとレースには出場
できません。私は間近でその車検を見る機会を得ました。またその責任者が
アジアを代表する台湾の国際審判員、施さんでした。私が台湾の自転車競技
連盟に良くお邪魔(台湾ナショナルチームのロサンゼルスオリンピック・ナ
ショナルチーム・ユニフォームはキャファが供給した)していたとき、よく
お世話になったので、すぐ側でいろいろ教えていただくことが出来ました。

昨年、大阪で行われました国体(なみはや)では専門外ながら車検を担当さ
せていただき、ここでも競技規則や、実際の車検について学ぶことが出来た
のです。

自転車競技は歴史もあり、オリンピック、世界選手権、アジア大会など、大
きな国際大会を日本で開催するなど、経験を積むチャンスが何度もありまし
た。これと比較してトライアスロンはなってない等というばかげた比較論を
展開するつもりはありませんが、こと車検に関しては真似るべきところが
多々あるのではないかと思います。

その代表的なものに、車検用器材の必要性を上げることが出来ます。バイク
のサイズの適正を計るための器材があると計測は迅速かつ正確になり、信頼
性が高くなります。こうした面での整備も今後考えていただきたいと思いま
す。

付け加えて申し上げますと、タイヤがきちんと付いているか、ブレーキは
ちゃんと動くか、ヘッドパーツにガタはないか・・・などというのは車検で
やることではありません。乗っている本人か、もしくはオーナーから依頼を
受けたサイクルショップの仕事です。審判は審判として車検とは何をすべき
かを考えなければならないと思います。 


Re>>>>

バイク車検について 
辻本様、いつもキャファ通信楽しく拝見させていただいております。明石市
在住の酒井と申します。JTU公認審判員です。キャファ通信 VOL34
4について、弁解めいた意見を一言。

>付け加えて申し上げますと、タイヤがきちんと付いているか、ブレーキは
>ちゃんと動くか、ヘッドパーツにガタはないか・・・などというのは車検で
>やることではありません。乗っている本人か、もしくはオーナーから依頼を
>受けたサイクルショップの仕事です。審判は審判として車検とは何をすべき
>かを考えなければならないと思います。

辻本さんのおっしゃる事は正論です。が、一般的にトライアスリートのバイ
クに関する知識や整備技術は決して十分ではなく、車検以前の整備に問題が
あるバイクが多々車検会場にやってきます。現実問題として、これら整備不
良のバイクをその場で失格にしたり、自分で整備しなさいと言ってると、か
なりの人がスタートラインに並べなくなってしまいます。ですから、車検会
場のすぐ横でバイク整備を行ってくれるメカニックがいる大会がいくつかあ
ります。

底辺層の拡大と、競技レベルの向上を両立させるのはなかなか難しいので、
やはり初心者向けの大会では、整備も含めた車検が必要です。もっと言え
ば、大会会場でバイク整備を教えてあげても良いのではないかとさえ考えま
す。対して、エリートクラスは辻本さんがおっしゃる通り、協議規則に基づ
いた審判の観点での車検を行うべきです。

TJ誌でもバイク整備に関する記事が頻繁に出ていますが、どれほどの選手
がきちんと読んで実践しているんでしょうか?もちろんキャファ通信読者の
皆さんはきちんと整備しておられると思います。

辻本から

私も大会メカニックを10年以上させていただいておりますの
で、状況は把握しているつもりです。酒井さんの主張が一般的な皆さんのお
気持ちだろうと思いますが、現実にどこからが整備不良で、どこまでなら認
められるのかがはっきりしませんし、大会によって基準がバラバラで、メカ
ニック泣かせのところも少なくありません。なかには初めからメカニック
サービスを期待している人までいます。バイクショップへ持って行くと有料
ですが、大会のメカニックサービスなら無料という認識です。こういう不心
得者は少数ですが、バイクの整備は参加者の責任で行われるべきであるとい
う意識を持っていただくための工夫はどこの大会でも見たことがありませ
ん。整備不良車を発見するという<車検>を廃止し、それが原因でリタイヤ
する人がいても、それはその人の責任だという考え方にたたなければ、いつ
までたっても状況は変わらないと思います。

私がメカニックサービスに行く理由は、車検に落ちた整備不良車を修理する
ためではありません。不可抗力で故障した人、修理が必要なバイクを修理す
るために行くのであって、整備なんかしたことが無いという人のために行く
のではないのです。サイクルショップが土曜日、日曜日、店を閉めて出かけ
るということは、どれだけの損失かおわかりでしょうか。それが整備不良車
のためだと言われてしまうと、涙が出ます。

整備不良車を無料で整備することが、<底辺層の拡大と、競技レベルの向上
>とおっしゃる酒井さんの主張にはどうしても賛同しかねます。車検はあく
までも競技規則に則った車検であるべきで、整備不良とはまったく関係のな
い話です。


Re>>>>

バイク車検の在り方 

辻本さん長良川大会のメカニックお疲れ様でした。今回話題になっておりま
す、長良川大会の車検を担当しました、岐阜県連合の平田です。

トライアスロンの車検はなくなる方向に進んでいるように感じます。すでに
多くの大会では車検は無しか、事前のチェックシート提出になっています。
JTU技術代表の中山理事も「車検で違反や不具合が100%チェック出来な
い以上厳密にする意味があるのか」また、「ルール上競技者には自主点検義
務がある」という意見を言われておりますが、今回は岐阜県連合として、出
来る限りルールに沿って車検をしようと独自に行いました。内容はマーシャ
ルが中心となって、レギュレーション(サイズや形)をチェックし、地元の
自転車店の方が安全確認をしました。今回初めて一人ですが自転車競技の審
判の方もお願いし、完全ではありませんが、昨年よりは改善されたと思って
います。基本的な考え方は辻本さんと同じで、規則にあったバイクかどうか
の確認が車検であると考えます。

また、酒井さんのおっしゃる現実の姿も事実としてあり本人のリタイヤだけ
ですめば良いのですが、第三者が巻添えを食う事を考えるとチェックすべき
かとも考えます。ただ、13回目をむかえる長良川大会ですら一般の自転車
店の方々はチューブラータイヤの接着強度などロードレーサーの知識は乏し
いのが現実です。

今後の方向として私見ですが、マーシャルによるチェックはあくまで、ルー
ル違反の確認を中心に行うべきだと考えます。更に、対応できれば安全面の
チェックを行う事が出来ればやるべきだと思います。また、メカニックサー
ビスに関しては料金を請求することがノーマルの姿と考えています。長くな
りましたが、皆様のご意見ございましたらお聞かせ下さい。今シーズンはあ
と美浜音吉と佐渡世界選手権のマーシャルを致しますので、もし見かけたら
声を掛けて下さい。

辻本から

長良川大会では車検終了後、選手がバイクを宿舎へ持って帰る
という変則的なシステムだったので、大会当日、車輪が変わっていたり、
DHバーの取付寸法が変わっていたので、車検の意味が無くなってしまいま
した。これでは車検の意味自体あまりないので、今後は、前日に車検後バイ
クを預かるか、当日に車検をするか(私は当日行うのが妥当だと思います)
改めるべきだと思います。ここで大切なことは、ルールがしょっちゅう変
わっていたり、難解なものだと、理解できない人や、誤解する人が必ず出て
きます。ルールを作る人、これを啓蒙する人は余程ちゃんとしていないと、
大会当日、大問題がおこることになります。守ってもらえるような正当性の
あるルールが前提で、みんなが知らないようなルールではだめなのです。

多くの大会で見ることですが、車検をする人がルールを知りません。ルール
ブックを持たずにメジャーも持たずに車検をするのですから、当然主観的で
す。自転車の整備状態を点検するにも、自転車のことを知らない人が多いの
で、どうしても基準がバラバラです。同じ大会でも「あの人は甘いから、あ
の人は辛いから」と並ぶ列を変える人もいるくらいです。バイクの整備状態
を判断する人の資格はあるのでしょうか。自転車の整備状態を一目で判断す
ることほど難しいことはありません。私は自転車の乗り始めて35年経ちま
す。仕事としてかかわりだしてから既に24年、これだけ経験を積んでいて
も一目で整備状態を判断することなど不可能です。リムセメントがちゃんと
塗ってあるかどうかを判断するには、全部剥がさなければなりません。わず
か10cmでも塗っていない部分があれば、タイヤはそこから剥がれるのです。

舞鶴デュアスロンは車検が厳しいのでメカニックはいつも大忙しですが、
コースではタイヤが外れて転倒している人を何人か見ました。リムとタイヤ
の適合を知っている検査員が何人いたでしょうか。

もし検査に合格したバイクで事故が発生したとき、車検をした人が責任を問
われることはないのでしょうか。

炎天下で、長時間、長い列を作っている人達のことを考えると、それだけの
意味があるのでしょうかと、問いかけたくなります。

こんなことが話題になるのも整備不良が多いからです。自転車店の無能と不
勉強がその一因であることは残念ですが事実です。皆さんがご自分で整備が
出来るようになる日まで、この種の話題は尽きないだろうと思います。


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